映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

こころに剣士を(2015年)

作品情報⇒https://press.moviewalker.jp/mv61544/

★★★★★★★★


以下、上記リンクからあらすじのコピペです。

=====ここから。

 第二次世界大戦中はドイツに、末期からはソ連に占領されたエストニア。1950年初頭、二つの国に翻弄された人々は、鬱屈した生活を強いられていた。

 ソ連の秘密警察に追われる元フェンシング選手のエンデル(マルト・アバンディ)は、小学校の教師として田舎町ハープサルに身を隠す。そこでは生徒たちの多くが、ソ連の圧政によって親を奪われていた。

 やがてエンデルは課外授業として子供たちにフェンシングを教え始めるが、実はエンデルは子供が苦手だった。そんな彼を変えたのは、学ぶことの喜びにキラキラと輝く子供たちの瞳であった。なかでも幼い妹たちの面倒を見るマルタ(リーサ・コッペル)と、祖父(レンビット・ウルフサク)と二人暮らしのヤーン(ヨーナス・コッフ)は、エンデルを父のように慕うようになる。

 そんななか、レニングラードで開かれる全国大会に出たいと子供たちからせがまれたエンデルは、捕まることを恐れて躊躇うが、子供たちの夢を叶えようと参加を決意する……。

=====ここまで。

 エストニアフィンランド・ドイツ)映画。


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 今年の2月に、フィンランド&エストニア旅行に行く前に見ようと思ってレンタルリストに入れたものの、忘れたまま旅行へ行き、帰って来て何か月も経ってからようやく見ました。

 エストニアは、タリンしか行けませんでしたが、本作の舞台ハープサルはタリンから西へ約100kmほど離れたリゾート地の様です。電車で行けるみたい。また行く機会があったら行きたいな。

 地味だし、割と定番のストーリーではあるけれど、小粒でピリリの佳作でした。


◆背中で語る男・エンデル

 冒頭から、こちらに背を向けた男が電車を降りて駅を出、通りを抜けて学校と思しき門を入って行く様子がずーーっと映されていて、その映像ですでに佳作の予感。そして、それは裏切られないのであった。

 エンデルというその男は、第二次大戦中はドイツ兵だったため、ソ連に組み込まれたエストニアでは「戦争犯罪人」として秘密警察に追われる身だった。名前のエンデル・ネリスも母方の姓を名乗ったもの。レニングラードから、ハープサルの田舎に身を隠すために逃げて来たのだ。彼の背は、まさに逃げて来た男であることを物語る。

 緊張感が漂う冒頭から、教員として採用され、スポーツクラブでフェンシング教室を開き、子ども嫌いだったエンデルが徐々に子どもたちと信頼関係を築いていくのは、お約束的な展開ではあるけれど、人物描写と構成が巧みなので陳腐感が全くない。シナリオと映像が素晴らしい。

 序盤はとにかく生徒に相対するエンデルが感じ悪い。

 フェンシング教室初日、エンデルが体育館に行くと、そこには想像以上に生徒たちが集まっていて驚きながらも、淡々と厳しく指導し始める。ニコリともせず「フェンシングの剣は昔は本物を使っていた。刺されば死ぬ。だから真剣にやれ」(セリフ正確じゃありません)。生徒たちの目は好奇心がアリアリだが、エンデルはそんな彼らに「しゃべるな」「よそ見するな」「足音を立てるな」と、結構怖い。生徒たちとフェンシングの剣の代わりに細い枝を集めているときも、生徒が「先生これはどう?」と枝を持ってくると「こんなんじゃ短すぎる」とボソッと言って生徒が持ってきた枝を無造作にポイと捨てたり。集めた枝を真っ直ぐにするためにお湯につけて伸ばしていると、別の生徒ヤーンがやって来て「手伝います」と言うのに、振り向きもしないで「いや、いい」とにべもない。

 そんなエンデルがちょっとずつ変化していくのがイイ。

 印象的なのは、中盤のあるシーン。ヤーンがなかなか直せない癖をエンデルが厳しく「足と手を一直線上にしろって言っただろ!」「手を延長線上に!!」と早口で指導していたら、低学年の女の子が「先生、延長線って何?」と素朴な質問を、、、。そして、ヤーンは枝の剣を投げ捨てて出て行ってしまう。慌てて雪の降る外まで追いかけるエンデルにヤーンが言う。「先生はウソをついてる。先生は僕たちのことが嫌いなんだ」

 そう言われたときのエンデルの顔がね、、、図星、、、。でも、憑き物が落ちたような表情。ヤーンに「約束する、君を剣士にするから」と言うエンデルは少し笑顔になる。生徒に笑顔を見せるシーンは、多分、ここが初めてではないか。

 その後、ヤーンの祖父にフェンシングの防具を寄付されたり、同僚の女性教員カドリと心通わせるようになったりして、エンデルの雰囲気が柔らかくなっていくのは、見ている者の心も解きほぐす。


パワハラ校長、チクる。

 この学校の校長、最初のエンデルが面接に来たときこそ良さそうな人に見えたものの、実はかなりの曲者。自分がスポーツクラブを始めろと言ったくせに、エンデルがスキー教室を始めようとすると、学校にあったスキー板を全部軍に寄付してしまって妨害する。次にフェンシングを始めたら、人気になって来たところで「フェンシングは認めん。もっと伝統的なスポーツにしろ」とイチャモンをつける。

 が、その後の保護者会で、フェンシング教室を続けて欲しいという保護者が続出、校長の思惑とは反対の結果となる。この保護者会で、最初に「フェンシング教室を続けて欲しい」と口火を切ったのが、ヤーンの祖父だった。「マルクスもフェンシングをやっていた」というおじいちゃんに、苦虫を噛み潰したような校長の顔。そして、その後、このおじいちゃんは秘密警察に連行されることになるのだ。多分、収容所送りになったんだろうなぁ。さすがソ連おそロシア、、、。

 保護社会で面子を潰された校長は、水面下でエンデルの身辺調査を始める。

 ナチスの紋章入りパスポートが調査で見つかり、エンデルの本名もバレる。エンデル、万事休すである。

 一方、レニングラードで開かれるフェンシング大会に「参加を見合わせる」と言ったエンデル。彼が見合わせると言ったのは、もちろん、レニングラードは危険だからだ。が、マルタに「どうせ負けるってこと? 挑戦したいのに!」と抗議されタジタジ、、、。一転、参加を決意する。

 レニングラードに向かう選手とエンデルだが、その裏で、校長から密告を受けたらしい秘密警察はレニングラードで彼を待ち構えているのだ。

 試合の描写は、さすが映画、、、という感じの甘々な展開だが、子どもたちの真摯な姿の前ではそんなことはどーでもよくなる。エンデルも精一杯のサポートをするが、何やら会場のあちこちに怪しい動きがあるのを察する。この辺りが、試合の進行と絡めて緊迫度が増し、本作のヤマ場である。

 決戦試合中に姿が見えなくなるエンデル。補欠だったマルタの大活躍で優勝するが、それと同時に、エンデルは連行される、、、。嗚呼。

 けれど、幸い(?)、すぐにスターリンが死亡したことで、エンデルは短期間の収容所生活で解放され、ハープサルに戻って来て、皆と再会して、ジ・エンドとなる。

 ああ、良かった。エンデルが戻って来たのが良かったよね。


◆その他もろもろ

 ……とダラダラ展開を書いて来たけれど、最初にも書いた通り、本作はまず映像が美しい。エンデルが列車から降り立つ寒々としたハープサルの街並み、学校近くの広場に建つ市、海を臨む原っぱ、街灯があまりなく真っ暗な夜のハープサル、、、と、映像がどれもとても雄弁。これぞ映画である。

 中でも、エンデルと生徒たちがレニングラードに列車で向かうシーンが素晴らしい。初めて見る都会の風景を遠くに見て、目を輝かせる生徒たちを列車の窓越しに映しているその映像だけで、それがソ連時代であることを思うと感動ものである。

 生徒たちの演技も素晴らしい。特に、要所要所でエンデルの心を動かすマルタがイイ! 気の強そうな顔と物言い、でもカワイイ。エンデルもついつい彼女の言葉に突き動かされてしまう。

 ヤーンのおじいちゃんを演じていたのは、レンビット・ウルフサク。あの「みかんの丘」(未見)に出演していたエストニアの名優。

 生徒たちには父親がいない子が多い。中盤の保護者会でも女性が多く、男性は年配だ。エンデルが生徒たちにとってどういう存在なのか、だんだん分かって来る。子ども嫌いと口にしていたエンデルも、そりゃ危険を冒してでも大会にこの子たちを連れて行ってやりたい、、、と思うのは、すごく説得力のあるシナリオだと思う。

 余計なシーンがほぼないと言っても良いのではないか。私は、こういうストイックな映画が好きだ。

 このエンデルには実在のモデルがいるとのこと。秘密警察に追われる身であるという設定は映画独自のものらしいが、彼はソ連が崩壊してエストニアが独立した後、93年に亡くなり、彼の作ったフェンシング部は今も存続していると、ラストに字幕が出る。

 タリンの現地ガイドさんも、モスクワやサンクト・ペテルブルグの現地ガイドさんも、皆言っていたのがソ連時代は暗黒時代だった」ということ。そして、今や、モスクワやサンクト・ペテルブルグは日本からは気楽に観光で行けない場所になってしまった。エストニアも、独立を守るのに必死のはず。小品ながら、そういう歴史的な厳しい背景もひしひしと感じさせてくれる良作だった。

 いつもはポスター画像なんか貼らないんだけど、ちょっとステキなのをめっけてしまったので、貼っときます!

 

 

 

 

 

 

 

エンデル役のマルト・アバンディがマイケル・ヴァルタンに似ている!?

 

 

 

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