作品情報⇒https://press.moviewalker.jp/mv91076/
★★★★★★
以下、上記リンクから概要のコピペです。
=====ここから。
1995年、ベルギーで少女2名が失踪する事件が発生した。若手憲兵隊のポールは小児性愛者を監視する秘密部隊「マルドロール」に配属され、少女失踪事件の犯人を追うことになる。
しかし、作戦は失敗してしまい、腐敗した警察組織の闇に直面したポールは、事件解決のため真実を求めるあまり、我を失い暴走し、心身に異常をきたしていく。
=====ここまで。
「変態村」や「地獄愛」のファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督作品。
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ネットで本作を知り、ヴェルツ監督作というので面白そうかも?とチェックしつつも、公開中に観に行けないかも、、、と思っていたけど、どうにか終映ギリギリに見に行くことが出来ました。
仕事サボって平日昼間。上映開始30分前までネットで席取れるんだけど、その30分前の段階で、何と、席取っているの1人!!! つまり、私の貸し切り状態。……え、貸し切りはさすがにちょっと、、、しかもこの映画、結構精神的に来そうだし、たった1人で150分はどーなのよ、、、と心配していたんだけど、いざ、開場したらチラホラと他にお客さんが入って来てホッ。最終的に10人くらいいらっしゃいましたかね、、、。あー良かった。
私、長い映画人生で、自慢じゃないけど、1人貸し切りの経験ないんですよ。3人くらいはあった気がします、、、大昔、名古屋で。
と、どーでも良い話はさておき、ネタバレしておりますのでよろしくお願いいたします。
◆掃き溜めが腐臭を放ちサイコパスは闊歩する
見る前にあらすじは読んでいたので、ヴェルツ監督作でも、「変態村」「地獄愛」とはちょっと方向性は違うんだろうな、とは思っていたけど、なるほど、ゼンゼン違っていた。本作は、後半サスペンス色が濃くなりホラーっぽくもなっているものの、それらを除けば社会派と言っても良いくらいではないか。
フランス映画でもよく見る“憲兵隊”。ベルギーにも、憲兵隊はあり、本作の舞台となっている95年当時は、そのほか、自治体警察、司法警察が警察組織として互いに反目し合っている状態だったらしい。大日本帝国の陸軍と海軍の対立みたいで、一般市民からすれば割を食うのは自分たちだけで、組織のプライド合戦に過ぎず非常に不毛。でも、ヨーロッパでもあるんだね、やっぱし。
本作で描かれている“事件”は実在のマルク・デュトルー事件がモデルとなっている。本作内では犯人の名前をマルセル・ドゥデューと微妙に変えているが、実際の事件と流れは大筋で同じみたい。とにかく、あまりにも酷過ぎる事件で、そりゃ警察が総スカンを食うのも当然。ポールの所属する憲兵隊の面々は本当にヤル気ゼロで、日本の警察で言うところの“ゴンゾウ”の溜まり場そのもの。ゴンゾウには、有能ながら働かない者も含むみたいだけど、ポールの居る所は正真正銘“掃き溜め”。
掃き溜めにいると、マジで腐るんだよね(経験者は語る)。ポールは正義感に燃えてヤル気もあるから、腐ることが耐えられない。掃き溜めに鶴を目指すんだけど、なかなかねぇ、、、。きっと、ポールのいた部署が掃き溜めだったんではなく、憲兵隊に“掃き溜めマインド”が蔓延していたのだと思われる。
そりゃ変態やサイコパスが闊歩するわけだよ。無法地帯みたいなもんだもの。
◆警察モノの王道のシナリオだが、、、
ポールは、娼婦の母親と、強盗犯の父親の下に生まれ、施設育ち(だったと思う)で、自分は真っ当に生きたいと切に願って、警察官になったのだ。だから、少女の行方不明事件にも手掛かりを探そうと必死になる。でも、そんなポールを冷笑する同僚たち。……見ているだけでムカつく。
マルセルが別の窃盗事件で勾留されたのを機に、マルセルに性犯罪歴があるのを知ったポールは家宅捜査に入り、令状の権限以上の捜索活動に及んでしまう。……まあ、警察モノにはありがちな展開。
その家宅捜査時に、人の叫び声を聞いた気がしたポールだが、同僚には聞こえなかったせいで、地下室を捜索したものの少女たちを見付けることは出来ず、、、という警察モノの王道のシナリオだが、これ、実際の事件でもそうだったらしい。恐らく、実際の事件では、ポールは居なかったんじゃないか。叫び声を聞いても、ポールのように令状以上のことに及ぼうとは誰もしなかったのだと想像する。それはきっと、今の日本の警察官でも同じだろう。ある意味、彼らは正しい。令状以上のことをして何も出て来なければ、処分されるのだから。ポールの行為こそ違法なのである、正論では。
これ、「ダーティ・ハリー」と同じじゃんね。令状主義が正義の前に立ちはだかる。もちろん、令状主義は市民の人権保護の観点から極めて重要、、、だからドラマになるのだが、本作は実際にもあったことだ。
おまけに、このマルセルは小児性愛者ネットワークに誘拐した少女たちを提供していたと分かり、そのネットワークの撮影したビデオを入手したポールは、警察の上層部の人間も関係していることを知る。……実際の事件でもそうだったのかどうかは分からないが、マルク・デュトルー事件が小児性愛者ネットワークと関連があると言われていたのは事実のようだ。おぞましさ極まれりである。
ポールは、愛する女性と結婚して、可愛い子供に恵まれたばかりで、私生活は幸せいっぱいのはずであるが、警察官としての正義感がその幸せも壊してしまい、ポールは暴走する。これも、ハリー・キャラハンと同じ。違うのはラスト。ポールは刑務所行きになる。
終盤にかけての、このポールの暴走の描写が、「変態村」や「地獄愛」を思わせるヴェルツ監督独特の不気味さであった。
ポールはどうすれば家庭を壊さずに済んだだろう、、、とこの不気味なシーンを見ながら脳内グルグル考えていた。行方不明の少女たちが見つかったというニュースを見て、出産直後の妻を置いて病院から飛び出した時点で、もう家庭崩壊は既定路線だよなぁ、、、とか。でもあの状況で、生まれたばかりの我が子を抱いて幸せに浸っていられないポールの気持ちも分かる気がするよなぁ、、、とか。
結局、真相に迫られた小児性愛者ネットワークの一味によって、ポールは家まで燃やされる。ラストは、ポールの元上司ヒンケルが刑務所のポールに面会に来て、「小児性愛者ネットワークに警察の上層部もいたのか?」(セリフ正確ではありません)と聞かれ、ポールは、、、。実は、このヒンケルが、ポールの捜査を阻んだ張本人なのである。
どこの組織でも壊死している部分ってのはあって、その箇所が大きいほどヤバい組織になるわけだが、ポールのいた憲兵隊は全体がまさに「腐敗」しており、警察組織は機能不全だったってことだね。
◆その他もろもろ
娼婦だった母親役を演じていたのが、あのベアトリス・ダル。すんごい存在感。母親の存在を隠していたポールの結婚式に乗り込んでくるとか、怖過ぎる。でも、ポールが窮地に陥ったとき、救いの手を差し延べるのもこの母親。……何だかなぁ。
曲者ヘンケルを演じていたのが、「変態村」「地獄愛」で主演していたローラン・リュカ。過去に業務で大怪我をして片眼を潰しアイパッチをしているんだが、その顔半分も傷が酷く、見た目が異様。出番は多くないが、絶対コイツは何かある、、、と思わせて、ラストでやっぱり、、、となる。
ポールを演じたアントニー・バジョンは、本作を見て初めて知った次第。童顔で、正義感に溢れた警察官、、、というイメージからは遠いが、演技は説得力があり素晴らしかった。撮影当時30歳くらいかな、性格俳優系で活躍するんじゃないかしらん。
ちなみに、パンフによると、このマルク・デュトルー事件後、ベルギーでは抜本的な警察改革が行われ、連邦警察と地方警察に再編されたとのこと。誰かの命が犠牲にならないと、機能不全の組織や制度が変わらないのはいずこも同じみたい。
日本の警察大丈夫??