
今年の1月、(個人的に)衝撃ニュースが発表されました。な、な、なんと!!!あの、山岸凉子原作の漫画「日出処の天子」が舞台化されると!!!!
いや~、ビックリしました。もう40年も前の作品ですから、なぜ今??と思ったら、野村萬斎の演出とある。どうやら、彼が以前からこの作品を舞台化し、畏れ多くも厩戸を演じたいと切望していたらしいとのこと。
厩戸を萬斎さんが、、、うぅむ、まあ、合ってると言えば合っているか、、、でも私の中では厩戸はもう決まっている(ここでは敢えて名前は書かないけど)ので、今一つピンとは来なかったけれども、初メディアミックスということならば、ファンとしては是非見たいよなぁ、と思っておりました。
……でもしばらく音沙汰なかったので忘れていたところ、5月になって、チケットの抽選があると、またまたTwitterのTLで流れて来たではありませんか。おまけに、公演期間がたったの4日間・全7公演、、、という異様な短さ・少なさ。しかも、会場の能楽堂は広くない(座席数が少ない)。こんなん、先着順で買えるわけないから、まだ抽選の方が良いのか、、、と思いながらも、私、チケット抽選で当たったのって数えるほど、、、。でも、申し込まなければ始まらんので、申し込むことに。といっても、4日間のうち2日は用があるのでそもそもムリ。
まあ、是非見たいには違いないけど、何が何でも、、、というわけでもないし、外れたら仕方ないかと思いながら申し込んだところ、千秋楽の最終回に当選したのでありました。……え、もしかして競争率低かったの??と思ったけど、Twitterには外れた方々のツイートがたくさんあって、かなりラッキーだったらしいと分かりました。どうも、原作ファンだけでなく、熱心な萬斎ファンも多数いらした模様。
当選してから、3か月ほどあったので、その間に、もう一度原作をじっくり読み直したのですが、何度読んでも面白い。これにハマって奈良旅行までした身としては、とっても楽しみにしておりました。
とはいえ、私、能を鑑賞したことは一度もなく、狂言は高校の行事で一度鑑賞したことがあるだけ、、、もしかしたら、その後、何かの機会で見た気もするけど、記憶にないということは鑑賞したこともないと同じなわけで、、、。でもまあ、原作を知っていれば何んとなかなるかな、と楽観視。萬斎さんは、あの鬼滅も舞台化しているらしい。
そんなわけで、以下、鑑賞した感想です。
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◆あの長編を2時間に、、、
幕開けは、厩戸と毛人が朝参の場で再会する場面から。馬子が毛人に「何を赤くなっておるのだ」と。その後、橘豊日大王が崩御する場面から、丁未の乱、毛人と布都姫の出会い、、、と大胆に展開していくが、決して駆け足&ダイジェスト感はなく、あの長大な原作の急所を押えつつ、人物の陰影をセリフと所作、コロスによる謡で上手く表現していた。
また、舞台には、原作でも重要な場所となる“夢殿”をイメージしたシンプルなセットが組まれており、それが灯篭の役割と果たしたり、寝所になったり、高御座になったりと、さまざまに様子を変えることで場面演出効果を発揮していた。
その灯篭には、影絵のように人の姿映し出され、夢殿の中で厩戸と毛人が雨乞いをするあの名シーンが、実に幻想的に演出される。……なるほど、こう来たか、、、と唸る。
また、厩戸と毛人のラブシーンも、その灯篭の影絵によって暗示的に描かれる。能では、ああいう情交の場面というのはどんな風に演出されるものなのかしらん??とか思ったものの、なかなか美しい映像だった。
前半50分は、雨乞いから、毛人の「布都姫をくださるので?」と厩戸に問うたところで「布都姫はやらん!」と厩戸が啖呵を切り橋掛かりを静々と去って行く所で終わる。
20分の休憩を挟んで、後半は、厩戸の母・穴穂部間人媛が厩戸を愛せない苦悩を語る場面から始まる。
泊瀬部大王の暗殺から、毛人が布都姫を救出する場面が後半最初のヤマ場。その後、毛人に思いを切々と語る厩戸に、毛人が苦しい胸の内を明かしながら諫める場面は、原作と同じで、見ている方が苦しくなる。
そして、あの地面が割れる決別の名シーンを、音と灯篭の映像で再現。うぅむ、、、そう来るか。
最後は、厩戸が膳美郎女と静かに橋掛かりを渡って行き、幕。
すごい。ホントに2時間で全部入れてしまった!!!

◆正直な感想
原作ファンとしては、リアルが原作と乖離することが怖ろしいのだが、萬斎厩戸は私の席(正面最後列)からは再現率8割といったところで、イイ線行っていたと思う。
Twitterの感想ツイートを見ると、萬斎さんが厩戸そのものだった!と書いている人も多いので、原作ファンを概ね納得させられたと言っても良いのでは?
私は、厩戸よりも、毛人の方がまさに“毛人”だったと感じたなぁ。演じたのは福王和幸さん。プログラムの紹介を見ると、「能楽師ワキ方福王流。16世宗家福王茂十郎の長男」とある。長身で顔(というか頭部)が小さく、遠目からは、まさに原作の毛人“まんま”でありました。
原作でも、女性は誰一人幸せにならない(男もだけど)のだが、穴穂部間人媛、刀自古郎女、額田部女王の苦悩を、能で静的に、厩戸や馬子、守屋、泊瀬部との権力闘争は狂言で動的に、それぞれ表現されていた。
特に、能場面は、(こういう表現は好きじゃないが)女の情念のようなものをねっちりと描いていて、何となく怖ろし気な感じさえあった。
なので、厩戸と毛人の決別の場面は、むしろ、あっさりというと語弊があるけれど、直截的な描かれ方で意外な気もしたくらい。
というか、私は、原作での厩戸と毛人の決別シーンは、完全に厩戸目線になって涙涙、、、だったんだけど、今回の舞台では「そらノンケの毛人には無理やって、厩戸さんよ、、、」と思ってしまったのが、自分でもビックリだった。え、何で??舞台だと、何で毛人目線になるわけ???と戸惑いつつ、終わってしまった。
なぜなのか、今、考え中です。答えは出ない気もしますが。
千秋楽の翌日に、萬斎さんと山岸凉子さんのトークショーがあり(もちろん行っていない)、その様子がTwitterに流れて来たのを見ると、萬斎さんは厩戸の面を2種類用意していたとのこと。結局、面はつけず直面で演じていたけれども、私的には面をつけた方が良かったんではないか、、、という気もする。萬斎さんは十分美しいオジなんだが、やっぱし360度どこから見ても100%“男”なんスよ。私みたいに、中性的な厩戸をイメージしている者からすると、やはりちょっとゴツいと感じてしまうのであります。
いやでも、贅沢な愚痴ですね。
あと、泊瀬部を演じていた茂山逸平さんもさすがの芝居。コミカルに、でも嫌らしさも上手く出していた。厩戸が泊瀬部に握手されて、その手を拭くという原作にあったシーンも、ちょっと形を変えて演じられていた。客席からは大いに笑いが、、、。
12月にも再演がある(チケットは完売)けれど、その時はまたブラッシュアップされていることでしょう。
私が鑑賞した前日には、NHKの収録があったようなので、BSあたりでオンエアがあるかも知れません。
◆画像集
以下、当日会場でゲットしたグッズ類。

パンフとトートバッグのセット

左:孔雀明王のアクスタ/右:クリアしおりセット
ネットから拝借した舞台の画像等。

左:萬斎さんの厩戸/右:毛人と布都姫の出会い

左:厩戸と毛人/右:泊瀬部